気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく情報開示

気候変動の対応についての考え方

当社グループは、サステナビリティ経営の推進を「将来世代の安全・安心・快適」への責任と捉えており、サステナビリティ課題への取り組みが、積水樹脂グループビジョン2030の実現と、当社グループが将来にわたって社会から必要とされ続ける上で不可欠なものと考えています。

気候変動への対応についてもマテリアリティ(重要課題)の一つと特定しており、温室効果ガスの削減目標を定めて排出量の抑制を進めるとともに、2022年9月にはTCFD提言への賛同を表明し、気候変動に係るリスク・機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について分析し、リスクを最小化して機会を確実に捉えるための対応策の検討を行っています。
2024年度は、指標・目標の成果をレビュー実施し、さらに今後の取り組みに活かすよう進めてまいります。

ガバナンス

当社グループでは、取締役会が経営戦略を議論する上で、気候変動に関する要素を考慮する体制を整備しています。また、CEOをはじめとする経営陣で構成するSJCグループサステナビリティ推進委員会を原則3カ月に一度開催し、気候変動に関する取り組みを管理・推進することで実効性を高めています。取締役会は同委員会の活動状況等について6カ月に一度報告を受け、適切な監督や目標達成に関する助言を行うとともに、重要な課題・指標の決定については、取締役会で決議することで、その取り組みの更なる推進を図っています。

戦略

気候変動に関するリスクを最小化する一方で、機会を確実に捉えて収益につなげていくことが積水樹脂グループビジョン2030の実現に向けて不可欠なプロセスだと考えています。リスクと機会の抽出については、脱炭素社会への移行段階における政策や規制、技術、市場などの観点、また気候変動がもたらす物理的影響の観点それぞれから、短期・中期・長期の複数の時間軸を考慮して検討を行っています。

時間軸の設定
短期 2025年まで
中期 2030年まで
長期 2050年まで

リスクマネジメント

当社グループでは、サステナビリティに係るリスクマネジメントプロセスの一環として、SJCグループサステナビリティ推進委員会において気候関連リスク・機会を含む全社的なリスク・機会の洗い出し、経営への影響度、 顕在化時期や財務影響度などを外部の知見も有効に活用しながら考慮し、リスク・機会の重要性を評価、対応策の検討を行っています。気候変動は当社グループのマテリアリティとも関連することから、特に重要な リスク・機会と位置付けており、グループ全体でマネジメントを行っています。
積水樹脂グループでは、グループ全体のリスクマネジメントの取り組みを強化すべく、今年度から、SJCグループサステナビリティ推進委員会の部会の一つとして、リスクマネジメント部会を立ち上げました。
グループ全体のリスクマネジメント体制の強化を図ってまいります。

リスク・機会と対応方針

リスク:政策と法

炭素税の導入により自社排出量に対する課税負担増

時間軸 事業影響 影響程度 対応の方向性
+1.5℃ +4.0℃
中期~長期 製造コストの増加 大↓※1 ×

GHG 排出量削減

  • 生産プロセス革新によるエネルギー使用量の削減
  • 再生可能エネルギーの活用
  • 省エネ活動の継続的取組
  • DX 活用、設備保全、生産性改善による生産効率の改善
  • ※1IEA「 World Energy Outlook 2022」(P465)のNet Zero Emissions by 2050 Scenario及びStated Policies Scenarioの数値から炭素価格を抽出し、排出量当たりの炭素税と仮定。

低炭素規制によるエネルギー価格高騰による電力価格の上昇

時間軸 事業影響 影響程度 対応の方向性
+1.5℃ +4.0℃
中期~長期 製造コストの増加
(+4.0℃では改善)
小↓※2 小↑※2

GHG 排出量削減

  • 生産プロセス革新によるエネルギー使用量の削減
  • 再生可能エネルギーの活用
  • 省エネ活動の継続的取組
  • DX 活用、設備保全、生産性改善による生産効率の改善
  • ※2IEA「 World Energy Outlook 2018」(P471)のSustainable Development Scenario 及びNew Policies Scenarioの数値から電力価格上昇率を推計して算出。

鉄鋼製品や石油由来製品への低炭素規制あるいは需要変動による原材料価格の上昇

時間軸 事業影響 影響程度 対応の方向性
+1.5℃ +4.0℃
中期~長期 製造コストの増加 大↓※3 大↓※3

規制材料の早期状況把握と代替え材料の検討

  • 調達先との連携強化による早期情報収集
  • リサイクル、省資源化、バイオマス原料を基軸とした製品開発
  • ※32DⅡ「The Transition Risk-o-Meter Reference(P49)のGLOBAL PRICE DEVELOPMENT HRC OF CRUDE STEEL(USD/TON)の鉄鋼価格上昇率を推計して算出。IEA「 World Energy Outlook 2021」(P101)のFossil fuel by scenarioの数値から原油価格上昇率を推計して算出した値に想定される炭素税影響額を加味して算出。

リスク:台風豪雨

洪水や土砂災害増加による生産拠点の浸水・被災・操業停止による資産損害と機会損失

時間軸 事業影響 影響程度 対応の方向性
+1.5℃ +4.0℃
短期~中期 売上高の減少
復旧費用・資産損害
中↓※4 中↓※4

サプライチェーンの強靭化

  • 各生産拠点のリスクの洗い出しと対応策の推進
  • 購買戦略に基づく複数購買、在庫戦略、材料切り替えの推進
  • ※4世界資源研究所(WRI)のAqueduct Floods及び日本の各自治体のハザードマップを用いて生産拠点の浸水リスクを評価し、国土交通省の「TCFD 提言における物理的リスク評価の手引き」を参考に、生産拠点の現状も加味し、浸水高さごとの想定停止日数と当該拠点の1日当たりの生産高を乗じて機会損失を算出。

機会:市場

サステナビリティ貢献製品の市場シェア上昇による売上高の増加

時間軸 影響程度 影響の内容
+1.5℃ +4.0℃
中期 × 2029年度までにサステナビリティ貢献製品の売上高比率を70%とする目標を掲げており、その達成へ向けて脱炭素社会の実現に貢献する製品の開発も進めている。+1.5℃シナリオの世界においては、こうした製品に対する需要がさらに強まることが予想され、当社の売上高へ増加影響をもたらすと考える。現時点では、需要変動の程度を予想する情報が不足しているため、影響度の定量化には至っていない。今後も引き続き情報の収集と分析を継続していく。

洪水対策工事の増加による売上高の増加

時間軸 影響程度 影響の内容
+1.5℃ +4.0℃
中期 × 道路の冠水対策や河川の増水対策における需要に応える製品群を販売しているが、仮に+4.0℃シナリオの世界に向かう場合、台風や豪雨被害の増加が予想され、こうした製品に対する需要が強まることが考えられる。こうした需要に応えて、被害の最小化や災害に強い街づくりに貢献できる機会が結果的に増加すると考える。現時点では、需要変動の程度を予想する情報が不足しているため、影響度の定量化には至っていない。今後も引き続き情報の収集と分析を継続していく。

指標と目標・2023年度実績

当社グループでは、気候変動に対する取り組みを一体としたマネジメントを行うために、積水樹脂グループビジョン2030で掲げる非財務目標を設定し、SJCグループサステナビリティ推進委員会で進捗管理を行い、推進しています。

リスクに対する指標:CO2排出量(Scope1、2)
目標 実績
2023年度 2013年度比で26%削減 39.1%削減(目標達成)
2029年度 2013年度比で46%削減
機会に対する指標:サステナビリティ貢献製品売上比率
目標 実績
2023年度 売上高比50%以上 55.4%(目標達成)
2029年度 売上高比70%以上

積水樹脂グループの今後の取り組み

積水樹脂グループでは、気候変動に関連し予測される「リスク」と「機会」に対して、取り組みを継続的に推進してまいります。脱炭素の取り組み、サステナビリティ貢献製品の更なる研究、開発を進めつつ、リスクの更なる定量化や精度向上をはかり、必要な取り組みを強化していきます。
引き続き、省エネ設備導入・更新、生産性向上に取り組むとともに、生産設備の集約や生産拠点の最適化の推進、エネルギー転換などを進めていきます。また、建屋更新時の屋根への太陽光発電システムの設置や非化石証書付き電力も継続活用し、CO2削減に取り組んでまいります。
新たに連結子会社となった関係会社への活動を広げながら、サステナブルな社会の取り組みに貢献してまいります。